■海外在住外国人の雇用(リモートワーク)

下記のケースにおける社会保険・所得税とその源泉徴収方法についてのご案内です。

ケース1(参考)

    • 雇用主  フランスに拠点をもつ企業(日本に拠点なし)
    • 現居住地 日本在住
    • 人材国籍 不問(フランス・日本・世界各国)
    • 採用場所 日本在住のまま雇用(=リモートワーク)
    • 雇用形態 正社員|契約社員|パート|アルバイト

ケース2(海外在住外国人のリモートワーク雇用)

    • 雇用主  日本に拠点をもつ企業(フランスに拠点なし)
    • 現居住地 フランス在住
    • 人材国籍 不問(フランス・日本・世界各国)
    • 採用場所 フランス在住のまま雇用(=リモートワーク)
    • 雇用形態 正社員|契約社員|パート|アルバイト

■社会保険・年金

正社員・契約社員
ケース1・2共通
日仏両方の社会保障制度へ加入することが原則です。

パート・アルバイト
ケース1
一般的な日本人労働者に対して適用される加入条件と同じです。例えば、週の所定労働時間および月の所定労働時間が正社員の4分の3以上である場合、週の所定労働時間が20時間以上の場合、報酬の月額が88,000円以上の場合なども、社会保障制度への加入が必要です。

ケース2
一般的なフランス人労働者に対して適用される加入条件と同じです。日本でいう週の所定労働時間に相当する時間数は、24時間です。ただし、週の所定労働時間を24時間以下にする手続をふめば、24時間以下で雇用することは可能です。この場合、24時間以下でも、日本でいう厚生年金保険・健康保険に加入します。つまり、所定労働時間が短いので厚生年金保険・健康保険へ加入できないという考え方はありません。同様に、報酬の月額が一定以下なので、厚生年金保険・健康保険に加入できないという考え方もありません。


日仏社会保障協定

ケース1・2共通
ただし、日本とフランスの間には、日仏社会保障協定(正式名称:社会保障に関する日本国政府とフランス共和国政府との間の協定)が締結されています。

かつて、この相互的な社会保障がなかった時代には、雇用されるために来日したり、渡仏したりしていた人の中には、社会保険料を両国に払う事態(二重払い)が起こっていました。

そこで二重加入を防止するため、ごく大雑把にいえば、日仏の現居住国で、適正に社会保障制度(会社員なら健康保険・厚生年金、個人事業主や無職の方などなら国民健康保険・国民年金等)を払っている人は、相手側の国へ渡って雇用されれば、本来であれば、雇用される国でも社会保障制度へ加入し、社会保険料等を払う必要があるところ、一定の手続きをを経て認められれば、雇用される国での社会保障制度への加入は免除されるという制度です。

加入する保険が違う

日本・フランス、そして世界中の国の社会保障制度は、属地主義を採用しています。大雑把にいえば、「どこの国に住んでいるか」によって、その住んでいる国の法律が当然に適用されるという考え方です。かつては、とある人は、住んでいる国に、その人を雇用する法人があるのが、ごく当然だったのです。このことは、各国の法律で、明記されていないものの、不文律として最上位の考え方にありました。日仏社会保障協定も、この範疇の協定です

ただしリモートワーク雇用が当たり前になってきた今日、日本とフランスで、その運用面で、大きな違いがでてきています。

それは、加入する保険です。

ケース1
日本在住の無職の方・個人事業主など(日本人・フランス人両方)は、通常、日本の国民年金・国民健康保険に加入しています。その方が、フランスにある企業にリモートワーク雇用される場合は、国民年金・国民健康保険にそのまま加入し続け、その保険料等を払います。「雇用される立場」に変わったことを理由に、日本の健康保険・厚生年金への切替はしません。

なおこの場合、日仏社会保障協定が適用されるものの、上述の免除を受けるための「一定の手続き」は不要です。

リモートワーク雇用するフランス企業は、源泉徴収は不要で、給与全額を受領した日本人などが、みずから保険料等の支払いを行います。

なお、このケース1情報は、公的機関のWEB等には明示されていません。また、国民年金・国民健康保険にそのまま加入し続ける根拠法は、国民年金法とのことです。

ただし、健康保険法には、「適用事業所は、国内に事業所を有する事業所に限る」とか「被保険者は、国内に事業所を有する適用事業所に雇用される者に限る」とかいった記載はありません。つまり、「日本国外に拠点を置く企業に雇用されている人は、我が国の健康保険法の対象外になる」とは、どこにも書かれていません。

(以上、西福岡年金事務所での確認にもとづく)

ケース2

一方、フランス在住の無職の方・個人事業主など(フランス人・日本人両方)が日本にある企業にリモートワーク雇用される場合は、「雇用される立場」に変わったことを理由に、日本でいうところの健康保険・厚生年金に加入し、相当する額の保険料・年金を関係機関に納付する必要があります。

リモートワーク雇用されることを申請する手続等は、根拠法令とともにWEB上に明記されており、雇用者・被雇用者どちらからでもWEB上で申請することができます。

実務上は、リモートワーク雇用する日本企業は、給与を源泉徴収をせずに国際送金して支払い、採用人材自らが、フランスでフランスの社会保険料等の支払を行います。

まとめ

ケース2の場合、フランスでリモートワーク雇用されている方は、本来であれば、使用者が納付すべき社会保険料等の会社負担分も納付する必要があることから、雇用している日本企業は、国際送金する金額に社会保険料等の会社負担分を加算する必要があります。

また、ケース1では、日本でリモートワーク雇用される方は、健康保険・厚生年金の社会保障が受けられません。一方で、フランスでリモートワーク雇用される方は、日本でいう健康保険・厚生年金の社会保障が受けられます。

厚生労働省としては、他国の社会保障制度に対して介入等する立場にはないとのことですが、結果的にこのことは、同じような社会保障制度と日仏社会保障協定のもとにありながら、日本・フランスの被雇用者が受けられる社会保障や、使用者の負担が異なる(いずれも日本側が不利)ことを意味しています。

個人的見解
海外リモートワークは、住んでいる国と採用企業の国が違います。あきらかに現行の法体系が追いついていません。そのなかで、したたかに、自国に有利なように法解釈や法改正ができるのが欧米諸国です。

一方の我が国の行政機関の対応は、自国の論理だけで積み重ねてきた通達・判例などとの辻褄合わせで教条的になっているか、あるいは初動での失敗、あるいは遅れをとったことの取り繕いをしているだけのように感じます。

■ 所得税

非居住者および外国法人については、日本国内で稼得した国内源泉所得のみが課税対象とされます。このとき、国内源泉所得は、国内において行う勤務、人的役務の提供に基因する給与等のみが対象となるため、源泉徴収は不要です。

なお、国内源泉所得の支払が国外において行われる場合は、そもそも原則として源泉徴収する必要がありません。

ちなみに、所得税についても、社会保険と同様に、二重課税を回避する制度として日仏租税条約(正式名称:所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国政府とフランス共和国政府との間の条約)が締結されています。ですので、日本側での所得税の支払免除を受けることができます。

実務上は、日本企業は、給与を源泉徴収をせずに国際送金して支払い、採用人材が自ら、フランスでフランスの所得税を納付します。