■海外リモートワークにおける社会保険|年金|所得税|源泉徴収

ケース1 日本在住のリモートワーカー(比較参考)

雇用主 フランスに拠点をもつ企業(日本に拠点なし)
採用人材 日本在住者(=リモートワーク)

ケース2フランス在住のリモートワーカー(←TRAJAPON)

雇用主 日本に拠点をもつ企業(フランスに拠点なし)
採用人材 フランス在住者(=リモートワーク)

ケース1,2共通

    • 雇用形態 正社員|契約社員|短時間正社員|パート|アルバイト
    • 人材国籍 不問(フランス|日本|第3国)
    • 雇用主 不問(日系|外資系)

■社会保険・年金

加入する保険が違う

日本・フランス、そして世界中の国の社会保障制度は、属地主義を採用しています。かつては、雇用する法人と雇用される人材は同じ国にあるのが、ごく当然でした。属地主義とは、この考え方をベースに、大雑把にいえば、雇用される人が「どこの国に住んでいるか」によって、その住んでいる国の法律が当然に適用されるという考え方です。このことは、各国の法律で、明記されていないものの、不文律として最上位の考え方にあります。

ただし、国を越えるリモートワークは、雇用する法人と雇用される人材のいる国が必ず異なります。そこで、どちらの国の法律を適用するかという問題がおきます。リモートワークが当たり前になってきた今日、日本とフランスで、その運用面で、違いがでてきています。

それは、加入する保険です。

ケース1

日本在住の無職の方・個人事業主などは、通常、日本の国民年金・国民健康保険に加入しています。そしてその方が、フランスにある企業(日本には事業所なし)にリモートワーク雇用される場合は、国民年金・国民健康保険にそのまま加入し続け、その保険料等を払います。「雇用される立場」に変わったことを理由に、日本の健康保険・厚生年金へ切り替えることはできません。フルタイム正社員であろうができません。(厚労省確認済)

なお、フランス企業に雇用されることを理由に、フランスの社会保険に加入する必要はありません(日仏社会保障協定:後述)。くわえて、「フランスの社会保険に加入しなくてよい」という免除を受けるための手続きも不要です。

雇用するフランス企業は、源泉徴収は不要で、給与全額を受領した日本人などが、みずから保険料等の支払いを行います。

なお、このケース1情報は、公的機関のWEB等には明示されていません。また、国民年金・国民健康保険にそのまま加入し続ける根拠法は、国民年金法とのことです。

一方の健康保険法を読むと、ざっくりいえば「常時五人以上の従業員を使用するもの」は原則「適用事業所」であり、「適用事業所に使用される者」は、健康保険の「被保険者」であると明記されています。この際、「適用事業所は、国内に事業所を有する事業所に限る」とか「被保険者は、国内に事業所を有する適用事業所に雇用される者に限る」とかいうように、制限したり例外扱いする表現はありません。つまり、「日本国外に拠点を置く企業に雇用されている人に対しては、我が国の健康保険法は適用されない」とは、どこにも書かれていません。言い換えると、「外国企業が、日本在住の日本人をリモートワークで雇用する場合、日本の健康保険や厚生年金に加入させる必要はない」とも書かれていません。

(以上、西福岡年金事務所での確認にもとづく)

ケース2

(個人事業主以外との契約)
一方、日本にある企業がフランス在住の無職の方(正確には個人事業主でない方)をリモートワーク雇用する場合は、「雇用される立場」に変わったことを理由に、フランスの(日本でいうところの)健康保険・厚生年金に加入し、相当する額の保険料・年金を関係機関に納付する必要があります。1日だけのアルバイトでも雇用するのであれば、この考え方が原則適用されます。

フランス在住者が、フランス国外の企業にリモートワーク雇用されることを申請する手続等は、根拠法令とともにWEB上に明記されており、雇用者・被雇用者どちらからでもWEB上で申請することができます。

(個人事業主との契約)
他方、日本に拠点をもつ企業が、フランス在住の個人事業主(Auto entrepreneur)にリモートワークで働いてもらう場合は、雇用契約も委託契約もどちらもありえます。この場合、フランス人・日本人どちらでも違いはありません。

実務上は、リモートワーク雇用する日本企業は、給与を源泉徴収をせずに国際送金して支払い、採用人材自らが、フランスでフランスの社会保険料等の支払を行います。

(いわゆるパート・アルバイト)
一般的なフランス人労働者に対して適用される加入条件と同じです。日本でいう週の所定労働時間20時間に相当する時間数は24時間であるところ、24時間以下にする手続をふめば、24時間以下で雇用することは可能です。ただしこの場合でも、日本でいう厚生年金保険・健康保険に加入します。つまり、所定労働時間が短いから、あるいは、報酬の月額が一定以下だからという理由で、厚生年金保険・健康保険へ加入できないという考え方はありません。

(まとめ)
ケース2で雇用契約する場合、使用者は、使用者が納付すべき社会保険料等(健康保険、厚生年金)の会社負担分をフランス政府へ納付する必要があります。ですから、雇用する日本企業は、社会保険料等の会社負担分を考慮したうえで報酬設定をする必要があります。そして源泉徴収は「する」のが、あくまでも原則です。すなわち、関係機関に源泉徴収相当額を納付する手続を経て、源泉徴収後の金額を本人に送金する方法です。いっぽうで「源泉徴収しない」、すなわち採用人材自らが、フランスでの社会保険料等を、会社負担分も含めて支払を行う方法を選択することが可能なのかは調査中です。

採用人材は、日本でいう健康保険・厚生年金の社会保障が受けられます。

ケース2で雇用契約ではなく委託契約した人材は、日本でいう国民年金、国民健康保険に加入しています。委託契約する日本企業は、源泉徴収をせずに国際送金を行い、採用人材自らが、フランスでこれら年金・保険料等を支払います。

個人的見解

厚生労働省としては、他国の社会保障制度に対して物言う等する立場にはないとのこと。そしてそのことは結果的に、日仏両国が同じような社会保障制度をもち、日仏社会保障協定を結ぶ関係にありながら、日本・フランスの被雇用者が受けられる社会保障や、使用者の負担が異なる(いずれも日本人や日本企業が不利)ことを意味しています。

海外リモートワークは、住んでいる国と採用企業の国が違います。あきらかに現行の法体系が追いついていません。そのなかで、したたかに、すみやかに、柔軟に、自国企業・自国民に有利なように法解釈や法改正ができるのが欧米諸国です。

属地主義をベースに「被雇用者の立場を尊重する」という観点から、「被雇用者の国の制度を適用する」という考え方を教条的に運用して、理論構築すれば、たしかに現在の制度運用のとおりになりうるともいえます。しかし一方で、我が国の採用企業、ならびに雇用される個人にとっては、結果的として、両国が対等な社会保障関係にあると感じられる制度運用ににはなっていないとの印象が否めません。

個人的には、「日本在住の日本人であれば、雇用される以上は、雇用主が日本国外の企業であろうが、我が国の厚生年金や健康保険が適用される」ことが、ごくふつうに実施されてしかるべきだと感じます。
(同じことをお感じになった方。ぜひチームJEXPOにご参加ください)

ところがそれがそうならないのは、「外国に拠点をもつ企業が、日本在住の日本人をリモートワークで雇用した場合、その会社負担分の社会保険料(健康保険・厚生年金)を、その企業に請求する体制が整備できていない」ということが一因であろうと感じます。このこともあいまって、「健康保険・厚生年金へ切替は不要」という過渡的な運用がなされてしまっているように感じます。

 

(参考)日仏社会保障協定

日本とフランスの間には、日仏社会保障協定(正式名称:社会保障に関する日本国政府とフランス共和国政府との間の協定)が締結されています。

かつて、この相互的な社会保障がなかった時代には、雇用されるために来日したり、渡仏したりしていた人の中には、社会保険料を両国に払う事態(二重払い)が起こっていました。

そこで二重加入を防止するため、ごく大雑把にいえば、日仏の現居住国で、適正に社会保障制度(会社員なら健康保険・厚生年金、個人事業主や無職の方などなら国民健康保険・国民年金等)を払っている人は、相手側の国へ渡って雇用されれば、本来であれば、雇用される国でも社会保障制度へ加入し、社会保険料等を払う必要があるところ、一定の手続きをを経て認められれば、雇用される国での社会保障制度への加入は免除されるという制度です。

■ 税金(所得税)

非居住者については、日本国内で稼得した国内源泉所得のみが課税対象です(=給与、賞与、人的役務の提供に対する報酬のうち国内において行う勤務、人的役務の提供に基因するもの)。平たくいえば、フランスにおいて日本企業にリモートワークで雇用される人には、日本の所得税はかかりません。ですから、源泉徴収も当然不要です。

ちなみに、所得税についても、社会保険と同様に、二重課税を回避する制度として日仏租税条約(正式名称:所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国政府とフランス共和国政府との間の条約)が締結されています。ですので、リモートワークではなく来日して就労する場合は、一定の要件を満たして手続きすれば、日本での所得税の支払免除を受けられます。

リモートワークの場合の実務上は、日本企業は、給与を源泉徴収をせずに国際送金して支払い、採用人材が自ら、フランスでフランスの所得税を納付します。

法人さま
個人さま

日本在住:海外企業リモート採用をお考えの方
国外在住:日本企業リモート採用をお考えの方

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