海外フルリモート

要旨

    • 世界の共通認識として属地主義があります。ざっくり解釈すれば、「雇われる人(社員)が住んでいる国の法律が原則適用される」という考え方です。ただし、各国の法律に、属地主義の概念は明記されていません。
    • 国境を越えるフルリモートワークでは、日本在住者なら日本、海外在住者ならその国の労働関係法が適用される可能性が高いです。ただし、日本を含めたほとんどの国で、法整備が追いついていません。
    • 日本在住社員が加入する保険 海外在住企業のために日本でフルリモートする社員が加入するのは「国民年金・国民健康保険」です。正社員フルタイム雇用であっても、「厚生年金・健康保険」には加入できません。
    • フランス在住社員が加入する保険 日本国内企業のためにフランスでフルリモートする社員が加入するのは、フランスの「(日本でいうところの)厚生年金・健康保険」です。
    • フランス在住企業による源泉徴収 リモートワークする日本在住社員への給与支払の源泉徴収は不要です。その社員が受取給与から「国民年金・国民健康保険」を支払います。
    • 日本在住企業による源泉徴収 リモートワークするフランス在住社員への給与支払の源泉徴収が必要です。日本企業は、日本でいうところの法人番号(フランスSIRET番号)をオンラインで取得ののち、当局に社会保険・所得税等の会社負担分を納入します。そして源泉徴収済の給与を、フランス在住社員に支払います。ある意味、日本でいうところので年金事務所での源泉徴収処理と同様です。
    • フランスは、国境を越えたフルリモートワークに対する社会保険・税金および源泉徴収方法など法整備が完備している稀少な国です。税負担や徴収方法等において、社員ともめるリスクがありません。これから広く世界展開を目指す国内企業さまが、フルリモートで海外営業に取り組む場合には、まずフランスから取り組まれることをお勧めします。

ケース1 日本在住のリモートワーカー

雇用主 フランスに拠点をもつ企業(日本に拠点なし)
採用人材 日本在住者(=フルリモートワーク・完全在宅勤務)

ケース2フランス在住のリモートワーカー

雇用主 日本に拠点をもつ企業(フランスに拠点なし)
採用人材 フランス在住者(=フルリモートワーク・完全在宅勤務)

ケース1,2共通

    • 雇用形態 正社員|契約社員|短時間正社員|パート|アルバイト
    • 人材国籍 不問(フランス|日本|第3国)
    • 雇用主 不問(日系|外資系)

社会保険・年金


加入する保険が違う

日本・フランス、そして世界中の国の社会保障制度は、属地主義を採用しています。かつては、雇用する法人と雇用される人材は同じ国にあるのが、ごく当然でした。属地主義とは、この考え方をベースに、大雑把にいえば、雇用される人が「どこの国に住んでいるか」によって、その住んでいる国の法律が当然に適用されるという考え方です。あまりに当然であったために、各国の法律には明記されていないものの、不文律として最上位にある考え方です。

ただし、国を越えるリモートワークは、雇用する法人と雇用される人材のいる国が必ず異なります。そこで、どちらの国の法律を適用するかという問題がおきます。リモートワークが当たり前になってきた今日、日本とフランスで、その運用面で、違いがでてきています。

それは、加入する保険です。

ケース1 日本在住のリモートワーカー

日本在住の無職の方・個人事業主などは、通常、日本の国民年金・国民健康保険に加入しています。そしてその方が、フランスにある企業(日本には事業所なし)にリモートワーク雇用される場合は、国民年金・国民健康保険にそのまま加入し続け、その保険料等を払います。「雇用される立場」に変わったことを理由に、日本の健康保険・厚生年金へ切り替えることはできません。フルタイム正社員であろうができません。

雇用するフランス企業は、源泉徴収は不要で、給与全額を受領した日本在住社員が、みずから保険料等の支払いを行います。

なお、このケース1情報は、公的機関のWEB等には明記されていません。つまり、法整備が追いついていません。ちなみに、国民年金・国民健康保険にそのまま加入し続ける根拠法は、国民年金法とのことです。

それでは一方の健康保険法を読んでみます。ざっくりいえば「常時五人以上の従業員を使用するもの」は原則「適用事業所」であり、「適用事業所に使用される者」は、健康保険の「被保険者」であると明記されています。

つまり、「日本国外に拠点を置く企業に雇用されている人に対しては、我が国の健康保険法は適用されない」とは、どこにも書かれていません。言い換えると、「適用事業所は、国内に事業所を有する事業所に限る」とか「被保険者は、国内に事業所を有する適用事業所に雇用される者に限る」とか、制限したり例外扱いしたりする文言はないのです。

「外国企業が、日本在住社員をリモートワークで雇用する場合、日本の健康保険や厚生年金に加入させることはできない」とする法的理由は存在していないのです。

なお、フランス企業に雇用されることを理由に、フランスの社会保険に加入する必要はありません(日仏社会保障協定:後述)。くわえて、「フランスの社会保険に加入しなくてよい」という免除を受けるための手続きも不要です。

(以上、西福岡年金事務所での確認にもとづく)

ケース2 フランス在住のリモートワーカー

(いわゆる正社員など)
一方、日本にある企業がフランス在住の無職の方などをリモートワーク雇用する場合は、「雇用される立場」に変わったことを理由に、フランスの(日本でいうところの)健康保険・厚生年金に加入し、相当する額の保険料・年金の会社負担分を源泉徴収して関係機関に納付する必要があります。1日だけのアルバイトでも雇用であれば、この考え方が原則適用されます。

ですから、雇用する日本企業は、会社負担分を考慮した報酬を設定する必要があります。そして原則、源泉徴収します。すなわち、まず、フランス在住社員を雇用する日本在住企業であることをフランス政府機関に対して申請します。そのうえで、関係機関に源泉徴収相当額を納付する手続を経て、源泉徴収後の金額を本人に送金します。日本でいうところの、企業が会社負担分を源泉徴収して年金事務所等へ納めるのと似た手続きです。

ですから、社員は、フランスの(日本でいう)健康保険・厚生年金の社会保障が受けられます。

これら手続等は、根拠法令とともにWEB上に明記されています。雇用する企業は、フランス国外であってもWEBで申請できます。

(パート・アルバイトの場合)
一般的なフランス人労働者に対して適用される加入条件と同じです。日本でいう週の所定労働時間20時間に相当する時間数は24時間です。ただし、24時間以下にする手続をふめば、24時間以下で雇用することが可能です。ただしこの場合でも、日本でいう厚生年金保険・健康保険に加入します。つまり、所定労働時間が短いから、あるいは、報酬の月額が一定以下だからという理由で、厚生年金保険・健康保険へ加入できないという考え方はありません。

(雇用契約ではなく委託契約の場合)
他方、日本に拠点をもつ企業が、フランス在住の個人事業主(Auto entrepreneur)にリモートワークで働いてもらう場合は、雇用契約以外にも委託契約がありえます。

そして委託契約の場合は、源泉徴収をせずに国際送金を行い、フランス在住者自らが、フランスでこれら年金・保険料等を支払います。

個人的見解

厚生労働省としては、他国の社会保障制度に対して物言う等する立場にはないとのこと。そしてそのことは結果的に、日仏両国が同じような社会保障制度をもち、日仏社会保障協定を結ぶ関係にありながら、日本・フランスの被雇用者が受けられる社会保障や、使用者の負担が異なる(いずれも日本人や日本企業が不利)ことを意味しています。

海外リモートワークは、住んでいる国と採用企業の国が違います。あきらかに現行の法体系が追いついていません。そのなかで、したたかに、すみやかに、柔軟に、自国企業・自国民に有利なように法解釈や法改正したのがフランスです。

属地主義を盾に「被雇用者の立場を尊重する」という名ばかりの大義で「被雇用者の国の制度を適用する」考え方を教条的に運用して、理論構築すれば、たしかに現在の制度運用のとおりになりうるともいえます。しかし一方で、我が国企業、ならびに雇用される社員にとっては、結果的として、両国が対等な社会保障関係だとは感じられない制度運用になっている印象が否めません。

個人的には、「日本在住の日本人は、雇用される以上は、雇用主が日本国外の企業であろうが、我が国の厚生年金や健康保険が適用されてしかるべき」、国がそのような社会保障を充実すべきだと感じます。

ところがそうならないのは、「外国に拠点をもつ企業が、日本在住の日本人をリモートワークで雇用した場合、その会社負担分の社会保険料(健康保険・厚生年金)を、その企業に請求する法整備・システム構築ができていない」ということが一因であろうと感じます。このこともあいまって、「健康保険・厚生年金へ切替は不要」という過渡的な運用がなされてしまっているように感じます。

つまり、海外在住企業から社会保険料の会社負担分を徴収できる国益を失っている状態です。さらには、我が国の国民は、健康保険法の主旨に沿って雇用されているのに、健康保険や厚生年金に加入できない状態です。我が国企業と個人の国益を守るため、一刻も早い法整備が必要だと思います。
(共感いただいた方。ぜひチームJEXPOにご参加ください)

 

(参考)日仏社会保障協定

日本とフランスの間には、日仏社会保障協定(正式名称:社会保障に関する日本国政府とフランス共和国政府との間の協定)が締結されています。

かつて、この相互的な社会保障がなかった時代には、雇用されるために来日したり、渡仏したりしていた人の中には、社会保険料を両国に払う事態(二重払い)が起こっていました。

そこで二重加入を防止するため、ごく大雑把にいえば、日仏の現居住国で、適正に社会保障制度(会社員なら健康保険・厚生年金、個人事業主や無職の方などなら国民健康保険・国民年金等)を払っている人は、相手側の国へ渡って雇用されれば、本来であれば、雇用される国でも社会保障制度へ加入し、社会保険料等を払う必要があるところ、一定の手続きをを経て認められれば、雇用される国での社会保障制度への加入は免除されるという制度です。

税金(所得税)


(ケース2のみ記載)
非居住者については、日本国内で稼得した国内源泉所得のみが課税対象です(=給与、賞与、人的役務の提供に対する報酬のうち国内において行う勤務、人的役務の提供に基因するもの)。平たくいえば、フランスで日本企業にリモート雇用される社員は、日本国に所得税を支払う必要はありません。

一方でこの社員は、フランスの所得税を支払う必要があります。そこで、日本企業は、フランス所得税の会社負担分を源泉徴収し、EU国内に設置する銀行口座(多くはフランスにある税務を代理する会社が保有する口座)からフランス政府へ納入します。

ちなみに、所得税についても、社会保険と同様に、二重課税を回避する制度として日仏租税条約(正式名称:所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国政府とフランス共和国政府との間の条約)が締結されています。ですので、リモートワークではなく来日して就労する場合は、一定の要件を満たして手続きすれば、日本での所得税の支払免除を受けられます。

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