フランス最低賃金|2024

フランスの最低賃金など労働条件に関する情報です。
勤務時間|有給休暇|パートタイム条件等を含みます。
これらは、フランスで雇用されるすべての方に適用されます。

  • いわゆるふつうのフランス人さん
  • フランス在住の日本人さん
  • これからフランスに行って働く日本人さん

さらには、日本に拠点をおく企業が、フランス在住人材を雇用する場合にも適用されます。いわゆるフルリモートワークです。

「日本企業が雇用するのだから、日本の労働関係法や最低賃金等が適用されるのでは?」と考えがちですが、違います。
本件は、フランス当局にも、福岡中央労働基準監督署にも確認済です。

採用企業日本に住所をもつ企業(いわゆる適用事業所)
フランスに拠点がない企業も対象
勤務地フランス(フルリモートワーク・完全在宅勤務を含む)
人材国籍フランス人|日本人|第3国(不問)
雇用形態正社員|契約社員|パート|アルバイト|短時間正社員

具体的には、以下のとおりです(2024年1月現在)。

最低賃金(SMIC)支給額11.65 EUR/時間(手取り 9.23EUR)
労働時間35時間/週
年次有給休暇30日(35時間/週の場合)
パートタイム最低24時間/週(採用人材と協議の上短縮が可能)

(参考) 採用企業が、月額手取り2,000EURを支払おうとする場合、支払総額は社会保険料の会社負担分を含めると3,371EUR(本人支給額2,554EUR)です。

属地主義・通則法

(以下‎福岡中央労働基準監督署でのヒアリングに基づき記述)
日本で登記された日本法人の職場で、日本人(日本に居住する日本国籍の方)が働く場合は、最低賃金・勤務時間・有給休暇等について、我が国の労働基準法、最低賃金法の適用を受けるのは、これは、疑いの余地がないところです。

ただし、そのことが各法に明示的に記載されているか、といえば、実はそうではありません。例えば、最低賃金は、「日本の居住者に適用される」とか「日本国籍者に適用される」とか「日本で登記された日本法人で雇用される者に適用される」などのように、「どのような労働者が対象になるのか」は、最低賃金法に記載されていません。労働基準法(労働時間|年次有給休暇)も、労働契約法も同様です。

この点についての労働基準監督署の見解は、属地主義をとっているとのこと。属地主義とは「法律の効力が及ぶ範囲が、当該法律が施行されている地域に属しているものに限定され、地域外のものには一切効力が及ばない」という考え方です。

ところが、日本と外国との間でのリモートワークでは、企業がある国・人材が住む国が必ず異なります。ですから、属地主義に則って、どちらの国の法律を適用するのか、という問題が必ず生じます。

このとき、世界のスタンダードは、労働関係の法律は、弱い立場にある「雇用される側を保護する」という観点に立ち、雇用される人が住んでいる国の法律を適用する、という対応です。

つまり、労働者がフランスで住んでいる限りは、日本人だろうが、フランス人だろうが、原則フランスの法律が適用される、という考え方です。他方、日本へ法的効力は及びません。

ではあるものの、繰り返しになりますが、我が国の法律が、上述の各法において「属地主義を採用している」とは、どこにも書かれていません。まだ未調査ではあるものの、属地主義についてILO関連の条文に明記されているようにも思えません。

いずれにせよ、我が国およびフランスともに、属地主義を採用しているわけですから、明文化された根拠がないとしても、フランス在住のリモートワーカーを採用する場合は、フランス側の最低賃金・勤務時間・有給休暇が適用されます。正社員|契約社員|パート|アルバイト、すべて然りです。

ところで、我が国には、法の適用に関する通則法という法律があります。この第七条に、「法律行為の成立及び効力は、当事者が当該法律行為の当時に選択した地の法による」とあります。これを読む限りは、上述のリモートワークに際して雇用契約を締結する場合に、双方が合意し「労働条件は日本の法律による」とすることは不可能ではないように読めます。ただしこの契約は、両国の属地主義に反することになります。

なお、上述のリモートワークを「雇用契約」ではなく「委託契約」を採用する場合には、我が国の労働基準法、最低賃金法の適用は受けなくなるのか、と労働基準監督署に質問したところ、「労働の実態を調査し、実態が雇用であれば、その場合は、労働基準法、最低賃金法の適用を受けるとの回答でした。

適用する労働条件

TRAJAPONでは、日本企業がリモートワーク採用する場合は、フランス側の勤務時間|有給休暇|最低賃金の考え方を適用いたします。採用企業さまが、日本の最低賃金のほうが安いから、日本の最低賃金を採用した雇用契約にしたい、とおっしゃっても、お引き受けできかねます。そんなたくさんの有給休暇は与えられない、というご相談も同様です。

なにとぞ、ご理解賜りますよう、お願い申し上げます。
なお、本記事は、我が国の職業紹介制度にもとづき、職業紹介事業者として雇用あっせんをする立場で執筆しています。企業さまが、仲介を介さず自ら採用人材と雇用契約を締結をなされる際は、企業さまがご自身でのご判断が不可欠です。ご留意くださいませ。