求人情報をとおした分析
このページは
「海外営業職を求人しても採用できない」
とお感じの海外事業部門・人事部門のご担当さま向けです。
とくに
「海外営業のプロ・即戦力がほしい」
とお感じの経営陣・人事ご担当さまです。
日本人のなかからは、
海外新規開拓やタフなネゴシエーション
ができる人材は、ほぼ見つかりません。
ごくわずかにはいらっしゃるとはいえ
好待遇の大企業などに採用されるため
中小企業が採用できることはまずありません。
実際の「海外営業」求人を見てみます。
掲載主は、海外取引が日常的に発生している事業者さま
がほとんどです。
そのような事業者さまでさえ、求人は、ほぼすべて
「まずは、国内営業・既存営業から担当いただきます」
「新規営業はありません」
「未経験でも可」
などとなっています。
推測できる背景は、以下の3つです。
- 事業者さまは、「海外営業できるプロがほしい」とは思うものの、同時に「雇用(指揮命令)することをイメージできない」と感じている
- 事業者さまが「まずは国内営業優先」で、海外営業はその延長線上だと思い込んでいる
- 人材紹介会社から「海外営業できるプロなんていませんよ」とバイアスがかかっている
そのようななか、
「じゃあ、日本在住の外国人さんなら営業できるのでは」
と思いつく事業者さまがいらっしゃいます。
このページでは
「海外営業プロの外国人さんは、残念ながら日本には来ていない」
(=海外にしかいない)
ということをお伝えいたします。
このことをご理解いただくため
我が国の出入国管理制度(在留資格・ビザ)について
説明申し上げます。
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日本で働くには在留資格が必要
「日本で働きたい外国人さん」は
日本に入国するにあたって、在留資格が必ず必要です。
在留資格要件を満たすか否かを判定し、許可するのは入出国在留管理庁です。
人事部門のご担当さまは、以下のことを念頭に入れておくことが肝要です。
- 在留資格には、就労が許可されるもの、そうでないものがあります。
- 「日本で働く」が目的の外国人さんは、来日できそうな在留資格を探します。
- 就労が許可される3大在留資格は下記です。
- 技能実習 (在留外国人の約11.1%)
- 特定技能 (在留外国人の約 5.4%)
- 技術・人文知識・国際 (在留外国人の約10.7%)
- 在留資格は「許可制」。ですから、外国人さんは、その許可された職種等でしか就労することができません。技能実習・特定技能の外国人が、営業等を行うことは制度上禁止です。
- 営業的な色合いがある在留資格は「技術・人文知識・国際」です。
- このうち「営業ができる人材」として来日を許可される可能性がある要件は、ごく大雑把にいえば、4パターンです。
- マーケティング・国際貿易・商学・経営学などを専攻した大卒相当
- 営業の実務経験10年以上
- 営業の実務経験3年以上でかつ外国人しかできない仕事に従事
- 日本語能力N2以上でかつ外国人しかできない仕事に従事
- 「日本で働きたい外国人さん」は、「営業がしたい」のではなく、「日本に来ること」そのものが目的です。ですから、もっともクリアしやすい「日本語能力N2以上でかつ外国人しかできない仕事に従事」の要件を満たして来日を果たしています。
(本記事は、「技術・人文知識・国際」を中心に記載しています。「外国人=技能実習・特定技能」とお考えの事業者さま向けではございません。)
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求人企業さまのご希望
求人企業さまは、ほぼ100%
外国人さんを採用するにあたり
「日本語能力試験(JLPT)2級以上」を最優先に要求します。
外国人さん採用では、なぜだか、
日本語ができるかどうかが最大の関心事になります。
国内で営業職を求人する場合は
必ず「業界経験5年以上」とかいう
条件をつけ、それが最優先のはずです。
にもかかわらず、外国人さん採用の場合は
「営業できるのか」は忘れ去られます。
結果的に「日本語ができる(=N2)、サブで翻訳」などとというたてつけで
「日本語能力N2以上でかつ外国人しかできない仕事に従事」
をクリアし、在留資格「技術・人文知識・国際業務」を取得して
入国しているケースが大半です(とくに欧米系)。
ですから「技術・人文知識・国際」で来日している外国人さんとは、
ざっくりいうと「日本語はかなりできる」ものの
「専攻は営業ではない」、「プロではない」人たちです。
国内在住の外国人さんは、
たとえ日本語がペラペラでも、専門分野の学歴が高くても
残念ながら出身本国でのビジネス・営業経験がなく、
海外営業には不向きという方が大半なのです。
そして、そのような外国人さんばかりが来日している状況は
「日本語能力試験(JLPT)2級以上」を最優先に要求する
わたしたち自身と我が国の在留資格制度が生み出しているのです。
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最優先スキルは「日本語」ではない
「日本語が堪能な日本在住の外国人に海外営業を担当させたらいい」
という発想がいかに的外れかを、裏返しの例でお示しします。
フランスに拠点をおくアパレルブランドが、日本市場を開拓したいとします。
そのフランス人経営陣が、2名の営業候補を見つけたとします。
- (A) フランス語が堪能で、アパレル営業に詳しくないフランス在住の日本人
- (B) 日本のアパレル営業に精通し、フランス語は話せない日本在住の日本人
貴方なら、どちらを推薦しますか?
間違いなく(B)のはずです。
ところが、
「海外営業は、日本語が堪能な日本在住の外国人に担当させたらいい」
という発想は、まぎれもなく(A)なのです。
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我が国の「外国人専門人材会社」
実は、我が国のすべての職業紹介事業者さまは、
国内在住の外国人さんに限っては、人材紹介できます。
大多数の「外国人専門」と称する人材紹介会社は、これにあたります。
そして、その事業者さまが紹介するのは、(A)です。
このなかに、優れた営業人材はいるのかは自明でしょう。
JETRO高度外国人人材とのマッチングにご参加の経験がおありであれば、
高度外国人人材とは、理工系の専門技術などを専攻している若手(学生)か
日本語が堪能ということであって
その道のプロではいないと、お気づきになられていると存じます。
その理由は、実は上述のとおり、
我が国の入国管理制度上、くわえて我が国の外国人採用の慣習から
実務経験をもった専門職・プロは、実質的に日本に来ていないのです。
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海外営業プロは本国にしかない
海外営業のプロは、本国にしかいません。
そして、その本国には、営業プロは、ものすごくたくさんいます。
このごく当たり前のことに、気づきましょう。
そして、海外での人材採用に、ぜひ目を向けてくださいませ。
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参考:在留資格「技術・人文知識・国際業務」
かつては、別々の在留資格であった「技術」と「人文知識・国際」が
ひとつになったものが「技術・人文知識・国際業務」です。
https://www.moj.go.jp/isa/content/001366995.pdf
青線 技術
赤線 人文知識(営業職での許可の可能性あり)
緑線 国際(営業職での許可の可能性あり)
見かけ上、ひとつの在留資格に統合されているものの、手続き上は、原則、
技術・人文知識・国際のいずれに該当するかが
教条的に(文字面どおりになっているかが)審査されます。
「合わせ技1本で許可」などは、原則ありません。
上記は、青・赤・緑、まったく別のものと認識して
読んでいくことがポイントです。
上記から、営業人材として入国できる可能性があるのは、
ごく簡単な言葉に言い換えれば、以下のように解釈できます。
省令基準一(人文知識)
下記のいずれかであること
- マーケティング・国際貿易などを専攻した大卒であること
- マーケティング・国際貿易などを日本の専門学校で専攻・修了すること
- 海外営業の実務経験を10年以上有すること
省令基準二(国際)
下記のいずれも該当すること
- 海外取引に従事すること
- 海外営業の実務経験を3年以上有すること。ただし大卒で翻訳・通訳等に従事(=審査基準:日本語能力試験N1・N2を保有)であれば不要。
要約
(省令基準一) 母国で大学等に進学する前から、日本の在留資格制度を理解しており、マーケティング・国際貿易などを専攻してきた学生など皆無です。「海外営業の実務経験を10年以上」をひっさげて、わざわざ日本にくる人もまずいないでしょう。
(省令基準二) 日本企業で営業がしたくて「営業の実務経験3年以上」の要件を満たしてまで、来日している外国人など、ほぼ皆無です。
以上のことから、国内では「営業ができる外国人」、「営業がしたい外国人」は、そもそもいないのです。国内で見つかる外国人は、日本語はできても、営業はできない・不得手・無関心な人材です。
ちなみに入出国在留管理庁は、技術・人文知識・国際の内訳を公表していないため、詳細の実数は不明です。