まずは、フランスの社会保障制度について下記をご覧くださいませ。
フランス在住の越境リモートワーカーは、フランスの社会保険(日本の健康保険・厚生年金に相当)に加入することができます。フランス国外の企業が、フランス在住のリモートワーカーを雇用する際、フランス政府が、その企業から社会保険の会社負担分を源泉徴収する制度とシステムが確立しているのです。
海外フルリモートワークの税金|社会保険
一般論として、越境リモートワークは、住んでいる国と採用企業の国が異なります。世界じゅうのほとんどの国で法整備が追いついていません。そのなかで、したたかに、すみやかに、柔軟に、自国企業・自国民に有利なように法解釈や法改正したのがフランスです。
この点について、厚生労働省としては、他国の社会保障制度に対して物言う立場にはないとのこと。このことは結果として、日仏両国が同じような社会保障制度をもち、日仏社会保障協定を結ぶ関係にありながら、日本・フランスの被雇用者が受けられる社会保障や、使用者の負担が異なるという事態をもたらしています。いずれも、日本人や日本企業のほうが不利です。
属地主義を盾に「被雇用者の立場を尊重する」という名ばかりの大義で「被雇用者の国の制度を適用する」考え方を教条的に適用すれば、たしかに現行運用のとおりになりえます。しかし一方で、我が国企業、ならびに雇用される社員にとって、結果としては、両国が対等な社会保障関係だと感じる制度運用になっていないと感じます。
個人的には、「日本在住の日本人は、雇用主が国内企業だろうが国外企業であろうが、雇用される以上は、我が国の厚生年金や健康保険が適用されてしかるべき」、国がそのような社会保障の充実を目指すべきだと思います。
そうはならないのは、「外国に拠点をもつ企業が、日本在住の日本人をリモートワークで雇用した場合、その会社負担分の社会保険料(健康保険・厚生年金)を、その企業から源泉徴収する法整備・システム構築ができていない」ということが主因のひとつだろうと推察しています。このことが災いして、「健康保険・厚生年金への切替は不可」という運用が続けられていると感じます。
我が国は、海外企業から社会保険料の会社負担分を徴収できる国益を失っている状態です。
試算してみましょう。我が国の厚生年金保険料収入は、毎年約35兆円。国内企業さんと労働者さんが支払った総額です。そこで、もし国民の1%が日本にいながら外国企業のリモートとして働き、国がその外国企業から厚生年金の会社負担分を源泉徴収できたら、その収入はなんと1750億円です。0.1%と見積もっても年175億円です。我が国国民が負担することなく増やせる国益です。
さらには、我が国の越境リモートワーカーは、健康保険法の主旨に則って雇用されることで、日本の健康保険や厚生年金に加入できるようになります。
我が国の労働者と国益を守るため、一刻も早い法整備が必要だと思います。
(共感いただいた方。ぜひチームJEXPOにご参加くださいませ)